第15回日本自費出版文化賞の最終結果
(2012年9月4日)

第15回日本自費出版文化賞 応募総数・部門別応募数

応募総数は771点。部門別応募数は以下の通りです。
部門応募点数
・地域文化部門86
・個人誌部門149
・小説エッセイ部門245
・詩歌部門105
・研究・評論部門110
・グラフィック部門76
合計771

第15回日本自費出版文化賞 最終選考結果

第15回日本自費出版文化賞(日本グラフィックサービス工業会主催、日本自費出版ネットワーク主管)の最終選考会が2012年9月4日に東京都内で開かれ、大賞1点、部門賞6点、特別賞6点(協賛各社賞など)が選出されました。表彰式は2012年10月20日(土)に東京都・千代田区のアルカディア市ヶ谷で開かれます。

今回の自費出版文化賞・大賞に選ばれたのは河合 勝さん(愛知県江南市)の『日本奇術演目事典』(研究評論部門)。審査にあたった色川大吉委員長、鎌田慧委員は「自身もマジシャンである著者が、この特殊な分野の膨大な資料を収集して記録した作品。日本の民衆史としても貴重なもの。古代からの奇術の演目とその種あかしの数々は資料に対する著者の情熱を感じさせる。一種の“奇書"であり、内容も大変に面白い」と、その選考理由を述べました。

その他の各部門賞、特別賞と審査員の評価は以下のようになっています(敬称略)。

部門賞は各部門1点です。

・地域文化部門賞は『手遊び 草編み玩具(第1巻 第2巻)』(新崎宏・沖縄県読谷村)
沖縄地域特有の繊維の強い植物の葉を使って作る生き物や用具などさまざまな創作事物の数々。特にムカデの姿には感心した。こういう手遊びの世界の奥行きは広く、全国から問い合わせがくるのではないか。まさに地域文化にふさわしい作品。

・個人誌部門賞は『海に墓標を ─父の最期の地ベトナムへ─ 』中元輝夫(岡山県岡山市)
幼い頃に戦死した父親の最期の地を尋ねもとめ、とうとうその地を訪れることのできた著者の記録。遺骨として残された白木の箱にあったのは小石だけ。忘れられない想いで、ベトナム沖で輸送船ととも沈んだことを確かめ、多くの協力を得て、その海上に向かう。半生をかけて探した父の記録である。

・小説・エッセイ部門賞は『山ながし─ある和算家の生涯─』一木壽一(山梨県甲府市)
この賞の文芸部門では初となる時代小説。江戸時代の数学者・関孝和の養子が甲府に移される。この小さな事実から出発して、その謎に満ちた人物を追い続けるのが主人公となる推理小説的展開となり、読んでいて興味がつきない。対象が地元ということもあり、多くの資料から導き出される展開には説得力と余裕がある。(この発表で著者名に間違いがありました。お詫びして訂正します=2012/09/14)

・詩歌部門賞は『句集 一番星』清家信博(大分県豊後大野市)
50年に及ぶ俳句人生の集大成。地元九州の地理がたくさん出てくるのも特色。その多くはスケールが大きく、展望のきいた句である。叙情歌も多く、内容の濃い作品集になっている。

・研究・評論部門賞は『帝国陸軍 高崎連隊の近代史』前澤哲也(群馬県太田市)
明治6年から昭和20年までの陸軍・高崎連隊は内外の争乱や出兵などで注目されているが、その歴史を克明に調査し、研究した労作。 足尾事件などの内政も含め、この連隊を通して日本の近現代史に深く関わる戦争と軍隊という「暗い」部分を明らかにしているともいえる。数多くの資料もきちんとおさえてあり、若い著者だが、文章も非常によい。

・グラフィック部門賞は『東日本大震災「亘理町復興支援写真集」REVIVE~復興~』東北プリント(宮城県仙台市)
昨年の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県亘理地区の写真と文章による記録。地元の人たちが撮った写真はまさに「記録すべきもの」になっている。短いながら添えられた言葉もナマの声であり、貴重なものである。

特別賞は6点です。

・地域文化部門・特別賞(富士フイルムグラフィックシステムズ賞)は『美しい水都が見えた -河内王朝時代の大阪地形を復元する』金子晋(大阪府大阪市)
万葉集や日本書紀などに登場する古代の大阪の姿を陸と海という観点から地図化してあらためて考えなおした作品。地図は2500分の1地形図130枚をもとに、古代の汀線である標高2メートルの地点を結んで海岸線として色分けできれいに製作したもの。13年以上かけているというが、まさに労作である。そして、その結果、そこには水都・大阪の新しい姿が浮かんできている。従来の古代研究に一石を投じる研究書ともいえる。

・個人誌部門・特別賞(ショーワ賞)は『つむぎ 語り継ぎたい20世紀の記録・特別編』つむぎの会(東京都八王子市)
昨年の東日本大震災は日本中の人々に衝撃をあたえたが、その思いを文字に残し、後世に伝えたいという思いで八王子地区で作成された文集。実に多くの人が、このことを考え、悩み、心にとどめているかがわかる。

・小説エッセイ部門・特別賞(リョービ賞)は『記憶の花々』古味なほ子(高知県高知市)
永年看護士をつとめてきた女性が定年後に、夫と一緒に廻った山々で見かけた花を刺繍に作り上げ、さらにその花々にまつわる思い出や記憶をつづった作品。花が好きなことがよくわかり、刺繍もとてもいい。著者の芸術的センスのすばらしさがあふれている1冊。

・詩歌部門・特別賞は『早春』佐々幸子(北海道室蘭市)
24ページの短い詩集ながら、その完成度の高さは圧倒的である。現代詩70年の歴史と時代をとらえ、高い批評性をもった、実にしっかりした言葉の数々である。

・グラフィック部門・特別賞(ホリゾン賞)は『風雪に耐えて─ある中国残留孤児の記録─』島本和成(広島県広島市)
中国残留孤児の人生の記録。孤児自身の表現としても後世に残る記録だが、写真を通したその姿がすばらしく効果をあげている。

・研究評論部門・特別賞は『ハンセン病療養所のエスノグラフィー
─「隔離」のなかの結婚と子ども─』
山本須美子、 加藤尚子(東京都港区)
2人の女性・人類学者がハンセン病療養所で行った聞き書きによる患者の記録。ハンセン病はまだ偏見から自由になっていないが、特に男性に行われた「断種」は語られることが少なく、それをありのままに記録したこと、それをきちんと伝えようとしていることはまさに顕彰に値することである。

第15回日本自費出版文化賞 大賞作品

部門 書名 著者 著者住所 発行者
(06)研究・評論 日本奇術演目事典 河合勝 愛知県江南市 日本奇術博物館

第15回日本自費出版文化賞 部門入賞作品

部門 書名 著者 著者住所 発行者
地域文化部門 手遊び 草編み玩具(第1巻 第2巻) 新崎宏 沖縄県読谷村 琉球新報社
個人誌部門 海に墓標を ─父の最期の地ベトナムへ─ 中元輝夫 岡山県岡山市 文芸社
小説エッセイ部門 山ながし─ある和算家の生涯─ 一木壽一 山梨県甲府市 文芸社
詩歌部門 句集 一番星 清家信博 大分県豊後大野市 揺籃社
研究評論部門 帝国陸軍 高崎連隊の近代史 前澤哲也 群馬県太田市 雄山閣
グラフィック部門 東日本大震災「亘理町復興支援写真集」REVIVE~復興~ 東北プリント 宮城県仙台市 東北プリント

第15回日本自費出版文化賞 特別賞作品

部門 書名 著者 著者住所 発行者
地域文化部門 美しい水都が見えた -河内王朝時代の大阪地形を復元す- 金子晋 大阪府大阪市 アド・ポポロ
個人誌部門 つむぎ 語り継ぎたい20世紀の記録・特別編 つむぎの会 東京都八王子市 揺籃社
小説エッセイ部門 記憶の花々 古味なほ子 高知県高知市 リーブル出版
詩歌部門 早春 佐々幸子 北海道室蘭市 佐々幸子
研究評論部門 ハンセン病療養所のエスノグラフィー─
「隔離」のなかの結婚と子ども─
山本須美子、 加藤尚子 東京都港区 医療文化社
グラフィック部門 風雪に耐えて─ある中国残留孤児の記録─ 島本和成 広島県広島市 島本和成

第15回日本自費出版文化賞 入選作品

部門 書名 著者 発行者
地域文化 フランソア喫茶室─京都に残る豪華客船公室の面影 佐藤裕一 北斗書房
地域文化 南氷洋遥かなり 中谷徹 五曜書房
地域文化 東中国山地 木地師の世界 石原洋三 石原洋三
地域文化 宇宙庵 吉村長慶 安達正興 奈良新聞
地域文化 東臼杵郡山林事件はいつ起きたか─明治 宮崎南の受難・北の抵抗- 甲斐嗣朗 鉱脈社
地域文化 新版新潟明和騒動文献資料集成 -民衆こそが歴史を動かす原動力である- 齋藤紀生 光陽出版社
地域文化 山河遥かに─城ノブ 尋究の旅 梨畑麦秋 清風堂書店出版部
地域文化 望郷─姫路広畑俘虜収容所通譯日記 柳谷郁子 鳥影社
地域文化 出会いの記憶─ゆふいん文化・記録映画祭の十年 中谷健太郎、伊藤洋典、平野美和子 海鳥社
個人誌 卒業歌 -悪童日記- 松山建爾 松山建爾
個人誌 画文で記す二〇世紀の若者像変遷 鷹野良宏 鷹野良宏
個人誌 ハンセンの詩「歌はこうして生まれた」CD村瀬信孝一周忌追悼「いのちの証 奪ったのはだれ」 吉幸ゆたか、吉幸かおる 吉幸かおる
個人誌 ゲッティンゲンの余光─寺田寅彦と高辻亮一のドイツ留学 高辻玲子 中央公論事業出版
個人誌 お母さんはまだらボケ─泣き笑い介護体験記 南慶子 ウインかもがわ
個人誌 天国の青い蝶を求めて 山下裕子 幻冬舎ルネッサンス
個人誌 開拓者魂 -夢の新天地北海道 開拓と砂金掘りの物語- 渡辺保 フォーユー出版
個人誌 外科医が外科医であり続けるために─あるー外科医の暴言集 大井田尚継 風詠社
個人誌 夢還る─九六十年代の話をしよう 三井一夫 三井一夫
文芸A 艇差一尺─ある熱血オアズマンの青春 大杉耕一 文藝春秋企画出版部
文芸A ヒマラヤ杉の育つあたり 鈴木敏督 新協出版社
文芸A 安土屏風 鈴木俊策 個人書店
文芸A くじらのクー 「心にあかりをともす」 大坂美詠 神戸新聞総合出版センター
文芸A イギリス点描 ライムストーンの家が並ぶ村々 大八木廣人 大八木廣人
文芸A 義烈 遊撃戦士 桐縞常末 青山ライフ出版
文芸A パパイヤの丘で 大畑靖 新風舎
文芸A いまそかりし昔 築添正生 りいぶる・とふん
文芸A 言霊居酒屋 須崎隆志 中西出版
文芸B 五行歌歌集 五季が通り過ぎていく 牧ひかり 牧ひかり
文芸B シークレット・ムーン 大谷順子 大谷順子
文芸B 歌集 戦中・戦後青春賦 新堀通也 新堀通也
文芸B ソニアンド 濱本加由幾 幻冬舎ルネッサンス
文芸B 星の卵─岡 貴子歌集 岡貴子 木戸敏雄
文芸B 句集 突進を忘れし犀 姜琪東 文學の森
文芸B 歌集 天の梯子 稲垣道子 角川書店
文芸B 句集 家路 松川洋酔 文學の森
文芸B 明日の神話 東谷節子 短歌研究社
研究評論 幕臣サブロスキー 江戸と長崎で終焉を見た男・大井三郎助の生涯 大井昇 長崎文献社
研究評論 イタイイタイ病報道史─公害ジャーナリズムの原点 向井嘉之、森岡斗志尚 桂書房
研究評論 瓜生繁子─もう一人の女子留学生 生田澄江 文藝春秋企画出版部
研究評論 幻の松花部隊─若き義勇隊員たちの満州 高橋健男 文芸社
研究評論 韓国の桜 後藤文利 梓書院
研究評論 耳で読む読書の世界─音訳者とともに歩む 二村晃 東方出版
研究評論 被災地巡礼─平成二十三年三陸大津波 名村栄治 創栄出版
グラフィック 死と生と愛─井川鉞之介作品集 井川鉞之介 東京新聞出版局
グラフィック 18トリソミーの子ども達─Children of 18trisomy、Photo Collection 渡辺とよ子(監修) 渡辺とよ子
グラフィック ニッポン時空写真館1930-2010─名所旧跡・街頭風景の今昔 二村正之 誠文堂新光社
グラフィック 昭和十年代の時空 伴千明、伴年了 OLA出版部
グラフィック 米軍の写真偵察と日本空襲─写真偵察機が記録した日本本土と空襲被害 工藤洋三 工藤洋三
グラフィック かみず─甲府くうしゅうの話 藤巻愛子 藤巻愛子
グラフィック 切紙カタログ 関谷篤 関谷篤
グラフィック 写真詩集「天上を翔る(かける)川」─大雪山・石狩川幻の源流 松本司 ㈲渡辺出版

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